診療譚目次へ トップページへ
 
7.決して諦めてはいけない! 脊椎間狭窄症
奥様の介助を受けながら来院された75歳のFさん、聞いてみると腰の脊柱管狭窄で歩行困難、フラフラ、ヨロヨロで見るからに危なっかしい。大きな公立病院の外科部長先生に手術するしか治療法はない、今すぐ入院して手続きをしなさいと言われて本人はハイお任せします、と承諾したのに奥様が絶対手術はダメと強硬に反対されて、鍼灸で何とかならんかとうちに連れてこられたとのこと。

事情は分かったが、ここまで症状がひどくなると正直なところ無理じゃないか、手術のほうがいいんじゃないかと答えたが、奥様がどうしても手術は嫌、とにかくやってくれと言われるものだから当分の間経過を見ながら治療することにした。

以前から糖尿もきついし筋肉も痩せて力が無い、お灸を主にして全体的な調整と腰の筋肉の状態が良くなるよう週1回治療を続けた。予想通り経過は余り変化しなかったが症状が進んで悪くならなければ上出来と、治療を続けた。

今思えば患者さんも根気よく続けてくれた。
1年ほどすると歩くときのフラフラが無くなっている。
それから2年続けて来られてゆっくりだが一人で歩けるまで回復した。
そこで治療は中断したがそのまた2年ほどして明石公園お花見に行った時にばったりお会いした。
なんと二人仲良く普通に歩いておられた。これは驚いた、そして感動した。
奥様のどうしても切らずに治すという執念がここまでご主人を立ち直らせた。
最初、治療する私の方がこの人は治らないだろうと思った。ごめん、反省。

今悪いからといってずっと悪いとは限らない、今は変化の途中で大事なのは今これから先、最後まで決して諦めはいけない。つくづく肝に銘じた次第です。
始めに戻る(目次へ)➡